Webメモ帳

鑑賞記録

映像作品の感想

2016年

『幸せなひとりぼっち』

洋画  ★★★☆☆

頑固だが誠実な老人が、妻や友人といった大事なものを無くしたことで孤独になり、自殺しようとします。そのたびに邪魔が入って死ねないシーンの繰り返しに不覚にも笑ってしまいました。過去を回想しながらも、少しずつ周囲の人間とのふれあいを取り戻していく過程が丁寧に描かれています。じんわりと心に響く感動作です。父親や妻が亡くなるシーンはやけに大げさでタイミングがとれすぎていて、リアリティを下げている。徹底して抑えた演出にして欲しかったところ。

『ヒトラーの忘れもの』

洋画  ★★★★☆

元ナチス兵という理由で、少年兵が食料もまともに与えられない環境で危険な地雷除去作業をさせられます。いつ爆発するのか、誰が死ぬのか、とてつもない緊張感です。しかし淡々と作業が進むうちに観ているこちらが一瞬油断しますが、まさにその瞬間唐突に、あっさりと登場人物の死が訪れます。そのリアルで悲惨な世界に引き込まれます。一方でこれをやらせるデンマークの軍人が、自国で多くの人を殺して地雷を残していったドイツ人に命をかけて償わせる行為は、理解できない話ではない。そして冒頭でドイツ人への憎悪を罰初させる軍曹は、実際に少年兵と人間同士の触れ合いをもつことで変わっていきます。それぞれの立場や感情が交錯する救いのない状況を、観客はただただ見守ることしかできません。

『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』

洋画  ★★★★★

良くも悪くも完璧な「スターウォーズ映画」です。新しい要素は極力控え、旧三部作の雰囲気そのままに現代のCG技術で圧倒的にカッコいい映像とストーリーを作っています。舞台となる数々の惑星や巨大な宇宙船は3Dの効果を活かしたスケールが大きく立体的な見せ方で、まさにスターウォーズの魅力を再現しています。新キャラ達も魅力的で、特にキャシアンが良いです。組織の理念を信じることを支えにして冷酷な作戦の遂行も厭わなかった彼が、最後は自らの思いを行動に乗せていく流れは、なんとなくルークの姿に重なるものがありました。そしてこの映画を観る前のいわゆる「予習」は必須です。この映画自体は歴史の1ページにすぎません。完璧な展開でファンを泣かせるラストシーンは、その後のレイアやルークへと思いを繋ぐ、未来への「希望」が描かれるからこそ大きな感動が味わえるのです。

『海賊とよばれた男』

邦画  ★★★☆☆

人情と根性で道を切り開いていく男たちの姿を見て感動します。でもなぜ感動できるかというと、現代でもはらそんな働き方を自分ができるとは思えないからです。届かないものへ憧れ、自分への罪悪感、そういったものが心に作用します。理不尽でも苦しくても、信頼する上司とともに人生をかけて仕事に打ち込み、何かをやり遂げる。それは我々日本人にとって美徳としか言いようがない生き方です。しかしその発想が長時間労働やサービス残業、パワハラを生み、楽しく仕事ができない状況を作り出している。そしてそこから抜け出すことを選んだ現代人にとって、昔の日本人的な熱い人たちの姿は「古き良き」、そして決して戻れないファンタジーの世界に見えます。占領軍のアメリカ人が主人公達の働きぶりをみて「美しものを見た」と言うシーンがありますが、今の日本人はまさに彼の立ち位置にいるのかもしれません。

『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』

洋画  ★★★☆☆

1920年代のニューヨークという舞台で、魔法動物が大暴れする映像が楽しいです。ストーリーは落ち着いた大人っぽい雰囲気です。テーマが魔法という荒唐無稽なものですが、リアルな舞台と落ち着いた俳優の演技に混じることで、ばかばかしくならず絶妙なバランスになっています。2組みのカップルが成立しますが、ラストはどちらもちょっと切ない展開になるのがまた良いです。

『この世界の片隅に』

アニメ  ★★★★★

序盤、「この映画は日常系ものだな」と思って観ていました。戦前を生きるごくごく普通の娘の生活がたんたんと、しかし魅力的に描かれていきます。登場人物のしぐさとセリフ、そして背景の全てに圧倒的なリアリティがあり、作品の世界の中に完全に入り込んでしまいました。この時代の人々の感覚や常識がすっと入ってくる感じです。そこから戦争に入るわけですが、決して悲劇性を強調することなく、あくまで「戦時の日常」が描かれます。ショッキングなシーンが多々ありますが、一貫して日常性がキープされているため、まるで自分が体験しているように感じて胸にずっしりときます。観終わったあとは、悲しいでもうれしいでもない、複雑な感情が渦巻いて一時呆然としてしまいました。善悪や幸不幸の解釈はその世界を体験した観客たちに委ねられています。

『オケ老人!』

邦画  ★★★☆☆

全てが過剰でなく程よい演出で、安定して笑えて感動できる映画です。幸薄い系のキャラを演じる杏がとにかく可愛かったです。いろいろと頑張る姿を観て、素直に応援したくなりました。老人たちは良い味出してる役者が勢揃いしていて飽きさせません。歳をとって、本当に面白いというか良い顔が並んでいて、それを眺めるだけでも笑えます。心に負担をかけずに観られるので、ちょっとした息抜きに最適だと思います。

『PK』

洋画  ★★★★☆

支配者層の移り変わりによって、多種多様な宗教の入り乱れるインド。そこに宇宙人がやってきます。地球人の固定観念を一切もたず、でも頭は良いpkが、ピュアすぎる心で宗教の矛盾に鋭すぎるツッコミを入れていきます。でも彼は決して神を否定するわけではありません。神様が決めたという戒律をでっち上げたり、宗教を使って儲けたり、自分たちの神を守るために他者を攻撃することを否定するのです。本物の神はただ信じているだけでよく、本当に大切なのは周りの人への愛であると説きます。これはまさに宗教改革ですね。しかもある特定の宗派への批判ではなく、インドに散らばる様々な宗教への批判です。とても啓蒙的で感動するのですが、この映画を当の一般的なインド人がどうとらえているのかが気になりますね。これを若者が受け入れているのだとすると、未来は明るいかもしれません。

『湯を沸かすほどの熱い愛』

邦画  ★★★☆☆

良い映画ではあるんでしょうけど、いまいち感動しきれなかったです。死を前にして頑張る母親のおかげで、いじめられてる娘、責任感のない夫、母親から捨てられた連れ子、などなどの悩める人たちが救われていきます。でも、その救われていく過程や心理がどうしても納得できなかったです。いじめに正面から立ち向える娘の心理、ダメ夫を見守る主人公の心理、居候の家に馴染む連れ子、どの展開をとってもすっと納得できるものがなかったです。最後に人間ピラミッドを見た主人公の言うセリフは唯一心に響きましたが、それを演技でなくセリフで言ってしまう分かりやすさがまた残念です。

『永い言い訳』

邦画  ★★★★☆

主人公は妻が事故死する瞬間に不倫しているようなクズです。TVにも出る作家ですが、葬式でも自分の世間への見栄えばかりきにする有様です。平均的な人より、若干共感力が弱い、でも根っからの悪人ではない。そんな彼が、流れで同じ事故で妻を失った男の子供達の子供達の世話をすることになります。たまに自分を棚に上げて子供や父親に理屈っぽく良いことを言うところなんか、妙にリアルですね。それによって反省し、真面目な人間になるだけだったら平凡な映画ですが、本作は違います。基本的に主人公は最後まで性格はクズのままです。でも序盤から人として変わる点、それはそんなクズである自分をしっかり自覚して向きあう、ひいては亡くなった妻への思いともちゃんと向きあえるようになることです。やはり、分かりやすい感動ストーリーではない映画って良いものです。

『淵に立つ』

邦画  ★★☆☆☆

ちょっと愛が足りないが、一応家族の体を保っているといった一家に、ある過去を持った人物が現れて崩壊へと向かいます。登場人物が絶妙に不気味で、みんな何を考えているか分かりません。浅野忠信をはじめその不気味な演技が見事です。ただ、その結果として自分が感情移入できるキャラが存在せず、どこに視点を置いて観たら良いか分からないまま終わってしまいました。雰囲気はすごく楽しめたのですが、メーセージがこめられててそうな演出が多々ある中、監督の意図を読み取れないものが多かったです。自分の読解力のなさを反省。

『世界一キライなあなたに』

洋画  ★★★☆☆

まさにこういうのをナイチンゲール症候群と言うのではないでしょうか。生きがいのない日々を過ごしていた主人公が障害者の元最強イケメン金持ちの世話をすることに。そのうちに彼の心を開いていいくことに生きがいを感じるようになります。その仕事上の達成感が次第に恋愛に繋がっていくわけですが、正直彼の人格のどこに引かれたのか良く分かりません。空気は読めないが気の良い彼氏が捨てられてしまうのですが、心底可哀想だと思いました。誕生日のシーンはなかなか気分が悪くなります。ナイチンゲール症候群は、患者が回復すると急激に気持ちがなくなるものらしいです。そういう意味では切ないラストシーンはある意味良い流れだったのかもしれません。

『ハドソン川の奇跡』

洋画  ★★★★☆

エンジントラブルで川に旅客機を不時着させた機長の実話です。ヒーローになる一方で、本当に判断が正しかったという責任を追求される間の心理描写が真に迫っています。自分の長年の仕事と経験に対する誇りと、自分の判断が間違っていたかもしれないという不安の入り混じった感情。緊張感がすごいです。ニューヨークだけでなく、誠実に仕事に打ち込んでいる全ての人達を肯定するラストはややインパクトにかけますが、安心して感動できるアメリカ映画です。車の自動運転という未来が来たら、こんな事案が巷にあふれるんだろうな、と想像しました。

『ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK The Touring Years』

洋画  ★★★☆☆

ビートルズのデビューから、熱狂的な人気を得るまでの過程がうまくまとまっています。社会現象にまでなる理由は何なのか。若々しくて、率直で、やんちゃで、それでいて音楽に対して真摯な彼らの姿を見て、その一端を垣間見れた気がします。ライブが熱狂するあまり、観客が音楽を聞きにではなく「ビートルズ」という見世物を見に来ていると彼らは感じていきます。本当はライブよりもスタジオで音楽を作り上げていく過程をもっとも楽しんでいたようです。最後のライブから、スタジオ活動の期間に入り、どんどん新しい音楽を作り出していく流れがかっこいいです。この映画はビートルズに熱狂した過去を持っているかどうかでかなり見方が変わりそうですね。

『怒り』

邦画  ★★★★☆

映像的にも内容的にも重苦しいシーンが多く、観終わった後に心にずっしりとした疲れが残りました。犯人は誰なのか?というサスペンスとしても面白いですが、それはあくまで作品のメッセージに対する道具にすぎません。「怒り」とは他人ではなく自分の無力さや後悔に対して湧いてくるものだということでしょうか。他人を信じることは難しく、状況によっては愛する人を疑うことも避けられない。逆に人を信じた結果裏切られることもあります。また誰かを救うために自分が何もできないと絶望することも。本作ではそういう人間の弱さを否定しません。どうしても不幸で悲しいことはおこってしまいます。でも弱い自分に強い怒りを感じもがき続けることこそが、人間なのかもしれません。

『聲の形』

アニメ  ★★★★☆

複雑な構成ですがテーマはコミュ障です。難聴はいじめ問題への布石で、いじめは主人公のコミュ障化への布石、と考えると分かりやすいかもしれません。顔を隠すばってんは記号的で漫画的ですが、意外とリアリティあってドキッとします。一方でコミュ障にありがちな、孤立する自分の心に防御線をはるために周囲の人間を見下すマインドが一切なく、そこには多少違和感を感じましたね。この作品は人間の嫌な部分を遠慮なく表現します。難聴のヒロインは空気読めずに状況をこじらせる。主人公は孤立した後に昔いじめてた女に救いを求めるゲスなやつ。いじめを傍観しておきながら被害者ぶる川井。それを卑怯だと言って素直にいじめてた自分を正当化する植野。そんな彼らは高校生になって社会性を身につけてはいても、本質は何も変わっていません。やさぐれた主人公がそれを吐き捨てるように指摘していくシーンは少しぞっとしました。でも最終的にはそんな不完全さも含めて相手を直視し、触れ合っていく主人公の姿に感動です。

『君の名は。』

アニメ  ★★★★★

恋愛ものを盛り上げるのは二人の間をはばむ障害ですが、この映画の設定はまさに完璧と言って良いと思います。片思い、病気、身分などの使い古された装置を一切用いず、空間的にも時間的にも二人を絶妙に行き違えさせます。アニメの質も高いです。男女が入れ替わった演技を、過剰でわざとらしい動きではなくごく自然な仕草の中に表現しています。そしてなにより背景が美しいです。神秘的で美しいが閉鎖感を感じさせる田舎と、賑やかで開放的な都会の対称性がすごく伝わってきます。個人的なテーマの解釈は、青春時代の夢(=想像力)が自分の大事な部分を作り上げていて、それはいずれ表面的には忘れてしまうが、心の奥に確かに残っていて人生のどこかで花開くということ。泣けて、笑えて、胸キュンでき良作。

『ジャングル・ブック』

洋画  ★★★☆☆

ストーリーはディズニー的に無難な内容ですが、映像が素晴らしいです。主人公の少年以外は全てCGで作られていますが、本物のジャングルや動物にしか見えませんでした。大自然の絵が本当に美しく、IMAXの大画面で観ると自分がジャングルの中にいるように錯覚してしまうほどです。英語をしゃべるリアルな動物には始め違和感を感じましたが、次第に気にならなくなりました。もはや3Dアニメとの違いは実写の少年のみで、アニメと実写の境界があいまいになってきているのでは。最新技術によるジャングル体験アトラクションといった印象です。

『X-MEN:アポカリプス』

洋画  ★★★☆☆

最強の敵として古代エジプト時代から眠っていたミュータントが出てくるのですが、とにかく強いです。ところが、描かれるキャラ達の心のテーマにこの敵は一切関係ありません。それぞれがもともと悩みを持っており、この敵と出会うことでそれについて考えるきっかけを与えられるだけです。ストーリーとしては、最強の敵がいるのにそれを脇に追いやって、仲間内での喧嘩や和解がこじんまりと展開するだけに過ぎません。そのため、キーマンが改心してボスを倒すシーンを観て、せっかくのラスボスがとても矮小化されて見えてしまったので残念でした。アクション面でいうと、高速移動の能力を持ったマグニートの息子が、爆発からみんなを助けるシーンが個人的ハイライトです。かっこよすぎです。

『シン・ゴジラ』

邦画  ★★★★★

今の東京にゴジラが現れたらどうなってしまうのかを描いた政治フィクションです。政府がどう動くのか、自衛隊の防衛力はどの程度なのか、アメリカ含め世界がどう動くのか。全ての展開に無理がなく説得力があり、相当な取材を重ねたのだろうと想像されます。各所に過去作品へのオマージュが散りばめられていてファンには嬉しいでが、決して一作目の焼き直しなどではなく、全く新しいゴジラ映画を構築しています。今回のゴジラはあくまで地震や原発事故と同じ「災害」です。ゴジラそのものには戦争や水爆などの教訓めいたメッセージ性はありません。その「災害」に対して日本人がどう対処するのかという展開は、戦争を知らずに育ち、大きな震災と原発事故を経験した世代にとってものすごくリアリティがあります。そして今作の一番の感動ポイントは、日本という国への希望が示されていることです。会議室でなかなか対策が決まらないという流れはもはやお約束ですが、そのシステムの中で政府や官僚が自分のできる最善を尽くし、協力して対処していく姿を見て予想を裏切られました。主人公の立場はなんと内閣官房副長官で、政治システムのど真ん中で真っ向勝負します。地震や噴火などの災害に不安を感じながら生きる日本人に、我々なら何が起きても助け合って乗り越えられる!という希望を与えてくれる傑作です。

『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』

洋画  ★★★★☆

非米活動委員会の赤狩りによってブラックリスト入りした脚本家の戦いの人生を描きます。どんなに社会的に不利な立場になっても、決して自分の新年を曲げない姿が素直にカッコいいです。でも本当にカッコいいのは、自分の才能や頭脳を最大限に活かし、狡猾に、ズル賢く立ち回って行くその軽快さです。負け続けてもあきらめずに食らいつき、最後に勝利する展開は爽快です。冷戦時代のアメリカ人達の心情が、トランボを取り巻く人々の振る舞いによく表現されています。またトランボが影で作り出して行く数々の名作映画。1950年代のアメリカの空気感を知り、そして楽しむための教材としてもすごく良いと思います。個人的には、反共主義者だったウォルト・ディズニーをぜひとも登場させて欲しかったところですが、まあそれはムリな話なんでしょうね。

『そして、誰もいなくなった』

ドラマ  ★★★☆☆

主人公が自分の社会的存在を消されて追い込まれていくところや、徐々に周囲の人間に疑いがかかって信じられる人間がいなくなっていく序盤の流れは本当にしびれます。これほど次回を早く観たいと思わせるドラマは少ないです。でも後半事件が佳境に近くにつれていっきに緊張感が失われていきます。追い詰められた主人公に感情移入してハラハラするようなシーンは影を潜め、淡々と謎解きに向かって展開していく終盤はまさに退屈です。結局周囲の人間がなぜ裏切ったのかという理由も月並みで、あっけなくラストを迎えた感があります。おしい作品だと思います。

『AMY エイミー』

洋画  ★★★☆☆

歌手としての才能は文句なしの女の子ですが、いっぽうメンタルは非常に不安定。過食症や薬物依存症であることが、有名人になることで世間から叩かれ、一層不安定になっていく負のループに入ります。そして早くして亡くなります。せっかくの才能ある若者が、こんなことになって本当に残念だと思います。でもある面、その不安定なメンタルがなければその圧倒的な歌詞と歌唱力も生まれなかったでしょう。その歌の美しさは、残酷さの裏側でしか輝けないからころ、儚くも美しいのかもしれません。そういう意味で、マスコミが才能を殺した、みたいな論調は少し違和感を感じますね。

『ファインディング・ドリー』

アニメ  ★★★☆☆

CGでの水の表現がここに極まるといった感じです。今回も水中、地上、水槽とバリエーション豊な舞台でその映像表現のすごさを存分に楽しめます。水面から出た風景なんて、これ完全に写真じゃないか、と思ったくらいです。もはや現実世界のものをリアルに表現することに関しては、ピクサーの技術は行き着いてしまった感があります。ここから先は、その現実を超えたさらなる新しい表現を否応無しに求められてしまうでしょう。CGアニメのこれからの進化が楽しみです。ストーリーは相変わらず御都合主義のハッピーエンドです。途中途中の感情表現はすごく良くて入り込めるのに、とにかくラストが残念です。一瞬切ない展開になりそうだと期待しましたが、あくまでラストへの前振りでした。この子供向けの作り方はなんとかならないんでしょうか。

『家売るオンナ』

ドラマ  ★★★☆☆

一見変人でとてつもなく仕事ができる主人公が、その個性的な言動の結果、意外にも周囲の人に良い影響を与えていきます。そして意外な過去が明らかになる。そんないわゆるキャラもののドラマです。北川景子の演技もこれまた極端に漫画的ですが、「Go!」や「家を売るためです!」といった決め台詞の数々が絶妙に気持ち良いです。脇役達も憎めない愛すべきキャラばかりで、素直に応援したくなります。各話では複数の案件についてのプロットが並行して進行しますが、それらが終盤に絡み合ってオチにつながるところは見事です。仕事のやりがいって、与えられた職務に本気で取り組んでいれば後からついくるものだよなあ、としみじみ。

『ベルセルク』

アニメ  ★★★☆☆

アニメ第二弾です。かなりグロい絵をしっかりアニメで再現しており、中和役のパックとイシドロがいないときつかったかもしれません。3D CGで描かれるどす黒くてスピーディーなアクションと、中世ヨーロッパの宗教風味の怪しい雰囲気が、なんとも言えない味を出しています。ストーリーはやはり蝕以降の緊張感のなさはどうしようもなく、あまり焦点の定まらない展開になっていると感じました。

『ブルックリン』

洋画  ★★★☆☆

役者の演技、風景ともに美しい映画でした。自分が男だからなのか、どうしても主人公の行動の同期が分からず感情移入できませんでした。どちらかというとアメリカで彼女を待つ夫や、アイルランドの幼馴染の方に入り込んで、イライラ、ハラハラしてしまいました。ただ、故郷を離れて新たな人生を歩む心情の描写は見事で、つい実家を思い出してしまいました。現代は新幹線も飛行機もあって良い時代に生まれたなあと思いました。

『葛城事件』

邦画  ★★★☆☆

三浦友和の演技がすごいです。自己中心的でプライドが高く、一言で言えばクズというキャラです。それを、自然にリアルに演じているのが見事です。出てくる人物がみんな狂っていて、気持ちの落としごころのない話でした。家族を守るとか、死刑を無くしたいとか、口ではそれらしいことを言っていても、みんな中身は自意識とエゴの塊です。当然のように着々と家族が崩壊していき、最後まで何の救いもなく終わります。話の作りからして感情移入できないのが当然ですが、カタルシスがないのが辛いです。

『帰ってきたヒトラー』

洋画  ★★★☆☆

ヒトラーが現代のドイツに蘇ったら、という設定で始まるコメディです。悪人で怖い人間ではなく、あくまでコミカルに描かれていて、笑えるシーンがいくつも出てきます。でも後半は徐々に雰囲気が変わります。コメディという体裁は変わらないのですが、TVに出演したヒトラーがその魅力的なスピーチによって徐々にドイツ人の心を掴んでいき、SNSで話題となっていく様子が不気味に描かれます。ヒトラーが街行く人と話すシーンは実際の市民との生の撮影ですが、みんなあまり拒否反応を示さず、笑いながらヒトラーと接します。難民問題を思い浮かべながら「今が好機だ」というヒトラーを見て、恐ろしくなってきます。

『64 ロクヨン 前編/後編』

邦画  ★★★★☆

刑事物の全部のせみたいな大作です。とは言っても主人公は刑事ではなく広報官です。その分組織の思惑に縛られる立場であり、組織と正義の対立を際立たせる設定で良いです。広報官に左遷させられ、娘は関係が上手くいかず家出?して行方不明。そんな主人公が、次第に組織と対立してでも自分の信念を貫いていく流れの前編が面白いです。あるシーンで思わず泣き出すのですが、そこがクライマックスですね。後編はサスペンスの回収の流れですが、やはり謎が全て解けてスッキリはしますが、前編ほどの感動はないまま終わってしまいました。総合して、良作であることは間違いないと思います。

『裸足の季節』

洋画  ★★★★☆

結婚前に処女であること、処女性を持つことを求められる文化の中で、家に閉じ込められ次々と結婚されられて行くトルコの5人姉妹の話です。5人とも半端じゃなく美人なのですが、閉鎖的な場所と慣習に抑圧されていくことで、その儚い美しさがどんどん際立っていく気がしました。女性を結婚のための商品、親の所有物として扱う田舎の文化が残る中、都会のイスタンブールではある程度女性が解放されているような過渡期に生きる少女達の生き辛さがとても苦しいです。そんな状況の中、5人それぞれが違った道を歩んでいきます。主人公も含めて姉妹が進んだ道の先に何があるのかは描かれません。それを想像して、希望というか切なさというか、なんとも言えない気持ちになります。

『エクス・マキナ』

洋画  ★★★☆☆

美しいアンドロイドと美しい映像を楽しめるSF映画です。AIの怖さ、不気味さを感じさせるラストですが、それほどの意外性もなくシンプルなストーリーでした。アンドロイド役の人の演技は絶妙です。完全に人間でもなく、アンドロイドでもなく、「すごく良くできたアンドロイド」の雰囲気を見事に出していると思います。主人公が彼女に入れ込んでおかしくなっていく流れが少々強引で、もう少し心の動きにリアリティが欲しいところです。

『FAKE』

邦画  ★★★★☆

事前知識なしで観始めたこともあり、序盤は不当に扱われる佐村河内に同情し、ひどい話だなあと思って観ていました。ただし、外国人の記者に容赦ないロジカルな質問を浴びせられるあたりからだいぶ怪しくなり始めます。この人は自分に全く自信がないが、自意識は異常に高く、そのため虚言癖のような言動を繰り返しているのでは、という疑念が湧きます。クライマックスはついにシンセサイザーに向かい作曲を始めるシーンで、作曲の能力を示したかに見えるシーンです。でもいまいちすっきりしない。そこへ衝撃のラストシーンがきます。何が本当で何が嘘なのか、全くわからないゾッとする瞬間です。この佐村河内という人、なんというか、魅力的というのも違いますが、不思議な面白さを感じる人物だなという印象です。

『サウスポー』

洋画  ★★★☆☆

展開は至ってオーソドックスですが、その分安心して感動できます。栄光からの挫折と後悔、どん底への転落、そこからの決意と努力、そして復活のハッピーエンド。ラスボス戦に向けた修行のシーンなんかは、あまりにありきたりな演出で少し笑えました。でも全体的に演出が素晴らしいので気になりません。序盤の転落は重く辛く、本当に観ていて辛いです。その分そこからの復活劇のカタルシスは最高で、最後は観客が観たいままのハッピーエンドを観せてくれます。

『デッドプール』

洋画  ★★★☆☆

デッドプールが観客を向いて語りかけるなど、スーパーヒーローものをメタ的に茶化した演出が特徴的です。良くも悪くもこれぞ等身大のヒーローという感じです。発想はゲスで下品、戦いの目的も復讐と恋人との復縁という完全に個人的なものです。正義を語るX-MENの仲間の言葉に耳を傾けず、自分の欲求への正直さを貫いたままラストに向かいます。とことんコミカルでギャグ路線、でもアクションシーンは安定してカッコいい。スーパーヒーローものの一つのバリエーションとして、悪くないと思いました。

『ヒメアノ~ル』

邦画  ★★★☆☆

森田剛の狂気の殺人者の演技が自然すぎてすごいです。殺人シーンがリアルすぎ。岡田も森田ももともとは似た者同士です。地味で目立たない、ごく普通の高校生でした。その二人の人生が全く違うものになった原因は森田が受けた強烈ないじめです。いじめられたこと自体はほとんど運であり理由はないが、それによってこうも違ってくるという、かなり救いがない悲劇になってます。森田が人殺しをするシーンと、岡田があれする姿を交互に切り替えていくシーンの演出はえげつないです。グロいシーンは多いですが、全体的にコメディタッチなのに加えて、森田の狂気にはしっかりと過去に原因があることがわかっていくため、悪としての怖さには底があります。そのため、そこまで重い話ではない気がします。

『海よりもまだ深く』

邦画  ★★★★☆

阿部寛演じる主人公がとにかくクズです。不誠実な仕事で稼いだお金をギャンブルですり、離婚した妻に養育も払えない。実家に行ってお金になりそうな物を物色する。でも不思議なことに、観ていてまったく嫌悪感はないです。その理由はキャラの圧倒的な人間臭さです。人間そういうとこあるよな、と共感できるちょっとしたダメさが積み重なっている感じです。団地に住む母親の生活や、その中での親子の会話など、「庶民的」な要素が徹底的にリアルに悪意なく描かれていて、観ていてなんだかホッとします。最終的には人生の失敗を取り戻すような都合の良い救いのある話ではないですが、過去や理想に縛られずに今の普通の暮らしを楽しんでもよい、という風に認めてもらえるような感覚になりました。

『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』

洋画  ★★★☆☆

もはや「何が正義か」が相対化していることは大前提になっています。その上で、自分の信念に基づいて行動するのか、それとも政府組織の判断に基づいて行動するのか。その立場の違いがアベンジャーズの対立を産み、内輪揉めが始まります。シビルウォーと言えば南北戦争です。自治と自由貿易の南部がキャプテン・アメリカ、連邦制と保護貿易の北部がアイアンマンといったところでしょうか。互いの陣営がスパイダーマンやアントマンなどの新たな超人をスカウトし、空港で両者入り乱れてのアクションシーンはすごいの一言です。豪華で賑やかでかっこよく、盛り上がります。お互いの動機もそれなりにちゃんと描かれているので、その異様な光景もあまり違和感なく観れるところが良いです。しかし、このカタルシスのなさはなんとかならないものでしょうか。

『ズートピア』

アニメ  ★★★★☆

まさにタイトル通り、とても楽しい動物園を見ている気分になりました。様々な動物達の生態、住む環境が混ぜ合わさったズートピアという都市が、ものすごいディティールの完成度とともに構築されています。その舞台がそのままストーリー上のテーマと重なっているというアイディアはさすがです。ユーモア溢れる動物達の仕草を見ているだけで退屈しませんが、アクションや感動の要素もさすがディズニーで安定感があります。大人も楽しめる、とは言ってもやはり全ての子供達に安心して観せられるのがディズニーの基本ですので、無難で深みのないラストの展開もお約束です。

『あやしい彼女』

邦画  ★★★☆☆

おばあちゃんが魔法で若返る話です。上手くいかなかった、やりたいことが出来なかった、苦労ばかりだった。そんな思いを抱いて生きている人達が、中身は人生経験豊富すぎる女子の言葉によって自分の人生を見つめ直していきます。それぞれが自己肯定感を取り戻す瞬間に思わず涙です。残念なのは、やはり周囲の反応や、ラストに老人に戻る下りのリアリティのなさです。不思議なことを一つ起こすなら、それ以外の部分はとことんリアルにするべきです。それがいまいち完全に入り込めなかった原因かもしれません。

『レヴェナント 蘇えりし者』

洋画  ★★★★★

とにかく美しい実写映像と生々しいシーンの連続で、圧倒的な臨場感でした。映画の世界に入り込み、古き良きアメリカの自然の美しさと同時に、その恐ろしさの対比を強烈に擬似体験することができます。インディアンに襲われる冒頭のシーンとそこからの厳しい道のりは本当に恐ろしく、当時の白人達がいかに必死で生きていたかが伝わってきます。テーマは「復讐」です。登場人物それぞれが復讐心を持つ過程が相対化、矮小化されます。そして復讐を果たした後の虚しさも半端ではなく、人間のどうしようもなさを見せつけられます。

『スポットライト 世紀のスクープ』

洋画  ★★★☆☆

カトリックの神父が犯した性的虐待を暴く記者チームの話ですが、実話をベースにしていることもあるのか、ドキュメンタリータッチで落ち着いた展開です。自分が宗教を信じていないので事件そのものにそれほど衝撃を受けませんが、アメリカ人にとっては特別な意味を持つ事件なのでしょう。緊迫したシーンもあって楽しめますが、基本的には良くも悪くも社会派ドラマです。

『ルーム』

洋画  ★★★★☆

前半は監禁からの脱出が描かれ、後半では母子が外の世界でどう生きるかがメインになっていきます。すごいのは、中盤は息子にとって監禁されていた部屋の中での生活が、むしろ平和であったという印象で語られることです。祖父母と暮らすようになって人間関係が広がるのですが、母親にとってはそれがむしろ精神を疲弊させて行きます。一方息子は部屋での生活を懐かしく思いながらも、新しい世界に徐々に順応し、開けた世界で可能性を広げて行きます。家族愛で救われる展開から、ラストに部屋に戻るシーンまで観て、これは特殊な境遇の親子の話ではなく、新しい世界におびえながら飛び出していく人々一般へのメッセージではないかと感じました。

『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生

洋画  ★★☆☆☆

IMAX 3Dで観ましたが、序盤は迫力の映像に圧倒されました。かっこよすぎです。でも観終わって隣の席のカップルが「疲れた〜」と言っているのを聞いて同感でした。二人が戦う動機も正直ピンと来ないし、その後の展開もうまく飲み込めず、どういうことだ?と考え続けてしまいました。そして余りにテンポが速い。場面、登場人物、アクションが目まぐるしく切り替わっていき、悪い意味で息つく暇もありません。その上、上映時間がすごく長い!疲れてない時に観ることをおすすめします。

『リリーのすべて』

洋画  ★★★☆☆

主人公と問題の夫はともに画家ですが、この映画の映像の構図がどのシーンをとっても絵画のように美しいです。そしてリリー役の演技が良かったです。妻との関係から葛藤しつつも、自分が女性であるという確信はもうどうしようもない。そういった微妙な内面がうまく表現されていると思います。社会的な差別に悩む話はよくありますが、あくまで夫婦の内面の葛藤だけを描いているのがこの映画の特徴です。だからLGBTについての価値判断のようなものはなく、それによって生じる本人と夫婦関係の悩みにどう向き合うかという問題だけがあります。そのフラットな視点が良いです。

『アーロと少年』

アニメ  ★★★☆☆

CGによる自然の表現のレベルの高さに驚愕です。もうここまで来たかという感じ。アーロが見知らぬ土地から我が家に帰るまでの道のりの風景がバリエーション豊かで、その様々な自然の造形をこれでもかと美しいCGで見せてくれます。それだけでお腹いっぱいですが、逆にストーリーは平凡です。臆病で内向的なアーロが、少年を守るために勇気を出して恐怖を乗り越える話です。個人的には、臆病さを乗り越えないといけないという価値観がもう古いのではないかと思いますが。

『キャロル』

洋画  ★★★☆☆

主演の二人の演技も映像もとても美しい作品です。でも理由は分かりませんが、この同性愛についての悩みにあまり感情移入ができなかったです。たんたんと綺麗な映像が流れて終わっていった印象でした。しかしキャロル役の演技のオーラに圧倒されます。やりすぎなくらいの色気はすごいです。

『オデッセイ』

洋画  ★★★★☆

火星に取り残された一人の宇宙飛行士が、なんとか生き残ろうと頑張る話です。どんなに絶望的な状況になっても決してあきらめずに危機を切り抜けていく訳ですが、その力となるのは科学の知識と試行錯誤です。NASAのスタッフや他国のみんなの頭脳を合わせて助かる道を切り開く姿に感動です。この「科学」への肯定感、理系男子必見です。

『ザ・ウォーク』

洋画  ★★★☆☆

ビルの上での綱渡りのシーンを3Dで見ましたが、映画館で座ってるのを忘れて本当に怖くなって汗をかいてしまいました。このジェットコースターのような楽しさだけでお金を払う価値がありますが、意外にもシナリオも面白かったです。劇中の師匠にあたる人物の言葉の数々が伏線となり、それを最後に主人公が回収していく流れは見事でした。無謀なことに挑戦する変人の気持ちは理解できませんが、その人にしか理解できない美しさや魅力があるのでしょう。それを持っている人だけが、アーティストになれるのかもしれません。

『パディントン』

洋画  ★★★★☆

おしゃれでかわいいロンドンの街の魅力が詰まった映像が必見です。構図はあえて人物にフォーカスせず、背景にもピントを合わせ、コントラスト豊かな街並みやインテリアと一体化させています。衣装の色や照明の当て方も徹底して人物と背景を一体で美しく見せるようになっていて、どの場面も完成度の高い写真作品のようです。この作品の映像の良さは、ミニチュアの持つかわいさです。骨董屋の中の鉄道模型やミニチュアの家のおもちゃなどが、CGで現実のものに切り替わってエピソードが語られるシーンがあります。それが象徴するように、ロンドンの街もまるでミニチュアのようです。隣どうしが繋がったパステルカラーの小さな住宅が列をなし、その狭い家も中は素敵な小物類が彩っています。パディントンが住んでいた壮大なアマゾンの森から、その真逆のような過密都市に舞台を移すギャップの見せ方が見事ですが、どちらの舞台にもそれぞれの魅力があることがすごく伝わってきます。

『真田丸』

ドラマ  ★★★★★

50話という長丁場ながら、無駄なエピソード回や中だるみが一切ない奇跡のようなドラマです。真田信繁という、ある意味歴史の脇役の目を通して戦国時代後期の戦国武将たちの物語を総括するような構成が素晴らしいです。登場人物全員が単純なキャラ付けでなく、必ず裏と表の二面性を秘めています。それをなるべくセリフではなく文脈や演技で表現するので、心に重く響いてきます。武将同士の会話は常に表向きの言葉の裏の読み合いで、それを一切ナレーションなどで説明しないので観ている側も緊張感がすごい。主人公の真田家と家族を守りたい気持ち、秀吉への恩義に答えたい気持ち、戦国武将として歴史に名を残したい気持ちなど、いろんな感情がせめぎ合ったままラストまで突き進みます。そういったアンビバレントな面をメインキャラ全員がかかえており、観ている側にも複雑で深い感動を与えてくれます。

『僕だけがいない街』

アニメ  ★★★☆☆

過去に戻って事件を防ぐという使い古されたフォーマットではありますが、やはり妄想を刺激されてしまいますね。とにかくサスペンスとしては序盤から非常に面白く、引き込まれます。一方で心理描写はなんだか腑に落ちないところが多く、深みがないです。謎があってピンチがあってハッピーエンドがあるという、安心して楽しめるアニメです。大人が過去に戻ったのに周囲に溶け込むスピードの速さと違和感のなさ、悩んでた現在の主人公がなぜか過去に戻ったとたんに成長してヒーローになる都合のよさ。時間を戻すと言う荒唐無稽をやるのなら、その分それ以外の設定をとことんリアルに作り込んで欲しかったです。

『ブリッジ・オブ・スパイ』

洋画  ★★★☆☆

実話をもとにして作られていて、冷戦下のスパイ活動や、その頃の大衆の気分なんかがよく分かります。ベルリンの壁がまさに完成しつつある瞬間の描写はリアルで緊張感があります。法治国家の弁護士であることに誇りを持った主人公が、周囲からの批判を受けながらも毅然としてソ連のスパイの弁護をする姿がかっこいいです。まさに正義の人。正しいアメリカ国民とはこうあるべき、というメッセージ性を感じますが、日本人としてはどうしても部外者の視点になってしまいますね。

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