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読書記録

読んだ本の感想

小説

『家康、江戸を建てる』

門井慶喜(著)  小説 ★★★☆☆

家康が片田舎の関東に左遷させられてから、泥湿地が広がる江戸を切り開いていく話です。今の東京のある場所が、つい最近までは何もない辺境の地だったということがよくわかります。各章では工事を受け持つ人物を中心に江戸の仕事人達の活躍が描かれます。仕事にかける情熱とプライド。大きなプロジェクトを実現させた時の高揚感。まさに江戸を舞台としたドキュメンタリーです。小説というよりは、仕事のモチベーションを高めてくれるビジネス実用書に近い感覚で読みました。

『ペンギン・ハイウェイ』

森見 登美彦 (著)  小説 ★★★★★

はてなグログ 少年の見る世界の全てが素敵。自分もこんな風に世界を見ていたいと思わされます。一人称で書かれているはテーマとも一致していて良いです。

『瑠璃でもなく、玻璃でもなく』

唯川 恵(著)  小説 ★★★☆☆

ある夫婦の不倫の行く末が描かれています。恋愛感情と人生への不安から既婚者と不倫をしてしまう若い女性と、家庭での幸せと退屈さとの間で悩む妻の二人が主人公です。不倫なんて第三者視点で見たらバカなことをしているなと安易に思ってしまいがちです。でもシンプルで典型的な不倫の展開に乗せて、複雑な心境をとても丁寧に論理的に説明されると、そこに陥るメカニズムがなんとなく納得できてしまいました。欲張って恋愛・家庭・仕事の三つを全て手に入れようとして、あちらを立てればこちらが立たずを繰り返して悩む女性たちが、次第に折り合いをちゃんとつけ、自分の人生の軸を作って行いきます。人生に勇気を与えてくれる話だと思います。二人とも最初から最後までとにかく自分のことしか考えていないのですが、そこがリアルで良いです。

『ベター・ハーフ』

唯川 恵(著)  小説 ★★★☆☆

華やかに結婚生活をスタートさせた夫婦関係が、バブル崩壊などをきっかけに崩壊して行きます。懐かしい90年代の時事ネタを背景に、次から次へと人生のトラブルが起こります。登場人物の心理描写が徹底的に論理的・現実的に説明されており、女性側にも男性側にもとても共感できます。その共感の対象であるキャラ達は自己中心的で虚栄心が強く、あまり良い人間とは言えません。気持ちが良いほど自分の利益と評価しか頭になく、他人はそのための道具にすぎないといった感じです。しかし、自分も含めて人間は大なり小なりそんなものです。その人間の黒い部分がリアルに書かれているからこその共感かもしれません。終盤の落とし所もあくまで本人達の気持ちが中心であり、安易に他人との相互愛に行き着いていないところが気持ちが良いです。

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